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【馬と映画】第1回:
映画とは疾走する馬を映すために誕生したメディアである(1)

  • エンタメ

2016.11.18

今回より、うまびNEWS新連載コラム「馬と映画」がはじまります!

このコラムでは、映画ライターの鍵和田啓介さんが、馬の登場する名画や、とっておきのエピソードをご紹介していきます。

記念すべき第1回は、コラムのテーマにもなっている「馬と映画」の関係性について。そこには、意外な事実がありました。



 

 ■エドワード・マイブリッジと連続写真

「馬と映画」っていうのは、これはもう抜群に相性がいい。実際、スクリーンの中を駆け巡る馬を見ただけなのに、体温が2度くらい上がっちゃいました的なエクスペリエンスは誰にだってあるはずです。この連載ではそんな「馬と映画」について語り尽くしてやろうと目論んでいる次第でございます。


じゃあ、なんでこんなに相性バッチリなんでしょうか? 記念すべき第1回目のテーマはまさにこれですが、実を言うとその答えはもう出ています。そもそも映画とは疾走する馬を映すために誕生したメディアだから。これが答えです。どういうことでしょうか?歴史を紐解いてみましょう。


ほんの140年くらい前まで、人類は馬がどんな具合に走っているのか知りませんでした。より具体的に言うなら、馬が走っているとき、その4本の脚がすべて地上から離れる瞬間があるのか否かは詳らかになっていませんでした。理由は単純です。その動きがスピーディすぎて、人間の目では確認できなかったからです。


「写真に撮ったら静止画だし、わかんじゃね?」。仲間とどっちが正解かの賭けをしていた大富豪のリーランド・スタンフォード(彼は全部浮く派)は、エドワード・マイブリッジという科学者にして写真家にその解明を依頼しました。もちろん、時代が時代ですから、普通に撮ってもうまくいきません。そこでマイブリッジは10年くらいの歳月とスタンフォードの有り余る金を費やして、連続写真という手法を編み出してしまいました。


これは写真機を等間隔に12台並べて、馬がその前を横切るとシャッターが切れるようにして撮るっていう、要は今でいう連写ってやつですね(仕上がった写真はイラストみたいな感じです)。これによって「馬っていうのは前足と後足が胴の下で出会うときに4本とも脚が地上から離れる」ということが判明し、めでたくスタンフォードは賭けに勝ったのでした。ちなみに、賭金は25,000ドルだったのに対し、かかった費用は40,000ドルだったというから、完全に金持ちの道楽ですね。

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話はこれで終わりません。マイブリッジはこれを機にみるみる動物の動きの研究に没頭していきます。それで次に発明したのが、「ズープラクシスコープ」(そのものズバリ「動物の動きを見る装置」って意味です)っていう装置。その機構を言葉にすると意味不明になりそうなので、「パラパラ漫画をスクリーンに投影する装置」くらいに思っておいてください。とにもかくにも、これでもってマイブリッジさんは、連続写真で撮った走る馬の1コマ1コマをひとつなぎの「動く写真」として再構成しようと試みたってわけです。「ズープラクシスコープ」は1879年に一般公開されると、瞬く間に評判を呼ぶことと相成りました。


でもって、この「ズープラクシスコープ」は、1890年代にリュミエール兄弟が発明した「シネマトグラフ」にもかなり霊感を与えています。「シネマトグラフ」っていうのは、現在僕らが映画と呼んでいるメディアのことです。加えて言うなら、その最初の上映会で上映された作品の1つにも、やっぱり馬が被写体として映っていますが、長くなるのでその話はまた次回に。いずれにしても、「映画とは疾走する馬を映すために誕生したメディアである」と書いたのはそうした事情によるわけです。


ちなみに、マイブリッジは連続写真の発明に没頭していた期間、家庭生活をあまりにおろそかにしてしまったため、妻に浮気されてしまったそうです。しかも、あろうことか怒り狂った彼は妻を撃ち殺してしまったらしい。そういえば2000年代前半、その内幕を描いた映画を俳優のゲイリー・オールドマンが監督するって企画がありましたけど、立ち消えになっちゃったみたいですね。



文・鍵和田 啓介(かぎわだ・けいすけ)

1988 年、東京生まれ、ライター。映画批評家であり、「爆音映画祭」のディレクターである樋口泰人氏に誘われ、大学時代よりライター活動を開始。現在は、『POPEYE』『BRUTUS』などの雑誌を中心に、さまざまな記事を執筆している。著書に『みんなの映画100選』。


イラスト・長嶋五郎




  コラム「馬と映画」第1回、いかがでしたでしょうか?

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    あかまん
    『雪に願うこと』(原作:輓馬)、追い詰められた馬と人との息づかいと湯気と砂の音がなんともまた。#うまび #馬と映画1 https://t.co/GKUeT7UdwH
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    あかまん
    雪に願うこと(原作:輓馬)、寒さの中追い詰められた馬と人の息づかいと湯気が聞こえてくる感じがなんともまた。#うまび #馬と映画1 https://t.co/GKUeT7UdwH
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    ゆういち店長
    馬が登場する映画といえば、シービスケットだなぁ。日本の名馬も映画にしたら面白いと思う。あっ、名馬じゃなくてもハルウララとかユメロマンとかでも面白いかも!#うまび #馬と映画1 https://t.co/qkjSxdQDam
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